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映画に点数つけたり考えてみたり

M・ナイト・シャマラン「オールド」80点!! 

   オールド

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あらすじ)
人里離れた美しいビーチに、バカンスを過ごすためやってきた複数の家族。それぞれが楽しいひと時を過ごしていたが、そのうちのひとりの母親が、姿が見えなくなった息子を探しはじめた。ビーチにいるほかの家族にも、息子の行方を尋ねる母親。そんな彼女の前に、「僕はここにいるよ」と息子が姿を現す。しかし、6歳の少年だった息子は、少し目を離したすきに青年へと急成長していた。やがて彼らは、それぞれが急速に年老いていくことに気づく。ビーチにいた人々はすぐにその場を離れようとするが、なぜか意識を失ってしまうなど脱出することができず……。(映画.comより引用)

 

80点!!結構よかったですよ!

 1日で50年ほど過ぎ去ってしてしまう、というトンデモ設定の中で、あらゆる映像的見せ場、アイディアが凝らされていました一生が過ぎ去ってしまう恐怖、老化の気持ち悪さ演出が全開で、見る人によっては嫌悪感を抱く方もおられるかもしれませんが、この映画それだけでなく密室劇サスペンス要素であったりヒューマンドラマの要素がしっかり作られているので、意外と万人におすすめできるかと思います。しかし気まずシーンもあるので、親と行くのは微妙かも!!!

 

 この映画、設定に無理がありすぎる部分があるので結構批判されてる方もいるみたいですね。特に自分が気になったのは「人体内部の働きは急速で進むのに、妊婦さん、子供さん以外は特に空腹を訴えない」ところですかね。あと眠気とかはどうだ、とか色々考えたくなるんですが、映画のセリフでもあった、「髪や爪は死んだ細胞なのでこのビーチでは急成長しない」てのが多分理由なんでしょうね。

 空腹や眠気なんてのは死んだ細胞関係ないと思うので理由になってないですが、映画としてそんなこと一々描いていたら先に進まないので、つまりは「細かいことは気にするな」ってやつですな。TENETみたいなもんです。そういった意味では設定の無理矢理感はTENETの数倍マシですが。

 

 上でも書きましたが、この映画、老化や時間の経過というものに対する気色悪さを目一杯のアイディアで描いているのが非常に点高いです。特に凄まじいのが高速出産シーン笑。見ている間は文字通り開いた口が塞がらない状態で楽しみましたよ。

 このシーンで上手いのは、登場人物達が「このビーチでは時間が経つのが通常より早いのではないか?」と、いう構造に気づき始めている裏で、そんなことには気づいていない二人が事を成した、という点。「愛し合っている二人は、世界とは無縁である」というような、恋愛映画にありがちな要素としても面白いし、何しろ「成長しそれなりの年齢になった二人が本能のままに愛し合う」という、時間が経過する気持ち悪さと絡めた具合の悪さが最高です笑。

また、この新しく誕生したカップルの「好きなもの同士がくっついた純粋なカップル感」は「時間が経つにつれてゴタゴタになった主人公夫婦」との対比にもなっているんじゃないかと思いました。それゆえと言っていいか分かりませんが、この新しいカップルは割と散々な結末になるのですが笑笑

 

 それから先は、ロッククライミングサスペンス笑あり、骨変形ホラーシーンあり、老人同志のバトルシーンありと、舞台の構造を最大限まで活かした見せ場の連べ打ちで非常に楽しいです。個人的には予告編で見せすぎな気もしたので、周りの人に勧める時は予告なしで見てもらいましょう。

 

 さて、今回のシャマランお得意どんでん返しシーンですが、なるほど納得、腑に落ちたって感じです。シャマランも毎回毎回最後に物語をひっくり返すような仕掛けを作らなきゃいけない(少なくともファンはそれを求めている)ので大変ですよね。最後に何かあるのを分かられながら、その詳しい仕掛けについては劇中に分からせないように立ち回らなけばならない。

 今回の仕掛けについては、明らかに序盤から「何かありますよ〜」と、見せている点が面白いと感じました。「山の方から見られている?」ていうやつですね。「最後に何かあるのを分かられながら、その詳しい仕掛けについては劇中に分からせないように立ち回らなけばならない。」というメタ的な構造に真っ向勝負している感じがしますよね。こういう、メタ的な構造になっているからこそ、あそこで構えているのがシャマランだというのがいい意味を持ってきます。構造を見抜けなかった自分に対してのドヤ感が凄まじかったですね。

 振り返ってみると見事に伏線が貼られているのも見事でした。「明らかに具合の悪そうな人たちが集められている点」「ホテルには医療従事者が多かった点」「向こう側からビーチに行くように唆された点」

 あと、ルーファス・シーウェル扮する旦那が、映画「ミズーリ・ブレイク」を彷彿させるようなセリフを何度も繰り返していたこと。私自身「ミズーリ・ブレイク」は未見なのですが、要はミズーリブレイクとは「ミズーリ川が何十年もの間に無数の深い切り傷を加えてきた、モンタナ州中部の非常に起伏の激しい地域を示しているwikiより引用)」のだそう。これは、本作における描かれている「治験」というものは、「薬ができるまでに多くの人に傷を与える必要がある」というものである、という意味とリンクするのではないか。勘のいい人だったら「ミズーリブレイク」を連想したときに閃いてしまうのもなんですかね。兎にも角にも、私は勉強不足だったということで、「ミズーリブレイク」を鑑賞しておきたいと思います。

 

自分だったらこうする!のコーナー

 もしこの映画の監督とか脚本の人に、手直しを手伝うよう言われたらどうするか考えるよ!!イエーい!!

 

1子供だからこそ勝利する

 この映画、最終的にはトレントとマドックスがビーチから脱出し、ホテルの暗躍を警官に伝えることによって事件が収束するのですが、何かもう一声欲しかったなという印象。ビーチから抜け出す直前、サンドキャッスルを作りながら、マドックスは「大人になってもこういう風に子供心を忘れないものなのかしら?」と、まだ心は子供のままであることを仄めかすような発言をしている。つまり、彼らの心が子供のままであるからこそ「世間、お金のためとはいえ治験によって人を殺害する、大人の団体」を倒すという構図として見せることでよりカタルシスが得られるのではないかと感じた。案としては、序盤に子供達がテレビを見るシーンを挟み込み、(不自然にならないよう、夫婦喧嘩をしている裏など、シーンを工夫する)そこで流れている教養番組で、スーパーヒーローが何かと自分勝手な悪を懲らしめるシーンを入れ込む、など。ピンとは思いつかないが、「ホームアローン」のような、子供が大人に逆襲する映画を流しておくのも良い手なのではないかと思う。

 

2泳ぎかたはどこで習ったの

 トレントとマドックスがビーチから抜け出る際、泳いで脱出することになるのだが、6歳と11歳の子がなぜあんなに泳げるのかが不明である。年齢が経過しても、特に泳げるようになるわけではなく、せいぜい肺活量が少し上がる程度だろう。特にそのシーンにおいて、「息継ぎしないで泳切れるのか?」という、最後のサスペンス的な見せ場にもなる大事なシーンなので、せめて泳ぎが得意、という提示はしておいた方が良いだろう。案としては、序盤の海岸のシーンでトレントが姉貴に遠泳を申し込む、とかがいいのではないだろうか。少し不自然な気がしなくもないが、この姉弟、「当てもなくあらゆる人に職業を聞きまくる」という割と意味不明かつ不自然なことをしている(のちに伏線として語られるが)ので、泳ぎの申し込みくらい、キャラクター性格立てをかねて入れてやっても良いのではないか。

 

ぜひ私の案も頭の片隅に置きながら見てみて下さい〜